出口のない海

1945年4月、1隻の潜水艦に極秘任務を帯びた4人の若者が乗り込んでいた。
敗戦が色濃くなった日本は、最後の秘密兵器“回天”に戦況挽回の望みをつないでいた。
それは定員1名、脱出装置なしの小型潜水艦。そこに大量の爆薬とともに乗員が乗り込み自ら操縦、敵艦への自爆攻撃を仕掛けるというもの。

4人の若者のうちの一人、並木浩二は、甲子園の優勝投手。
周囲の期待を背に大学へ進学したものの、肩を壊してエースの座を手放してしまう。それでも並木は野球への情熱を失うことはなかった。
艦内で出撃命令を待つ並木の脳裏に、そんな野球に打ち込んだ青春の日々、そして大切な人たちのとの別れの日の思い出が静かに甦る。

長州ファイブ

ペリー率いる黒船の浦賀来航から10年後。外国を打ち払おうとする攘夷の嵐吹き荒れる幕末期の1863年、イギリスへ命がけで密航留学した5人の若者達がいた。
当時、密航は資材に値する国禁。彼らは、覚悟のあかしとしてサムライの象徴である髷を切り落とし、荒波に翻弄される数ヶ月もの公開に臨む。
5人の名は、伊藤博文、井上馨、井上勝、遠藤謹助、山尾庸三。
いずれも後年、歴史に偉大な足跡を残すことになる男達である。
粗末な服に身を包み、日本の新たな時代を切り開くという気概だけを胸に、ロンドンの地に立った長州藩の志士たちを、のちにイギリス人は敬意を込めて「長州ファイブ」と呼んだ…。

カーテンコール

東京の出版社に勤める香織は、ある事件がきっかけで福岡のタウン誌に異動を命じられる。
彼女の担当は読者から投稿された“懐かしマイブーム”を取材すること。送られてきたハガキの中から、一通を選び出した香織。
それは、「昭和30年代の終わりから40年代中頃まで、下関の映画館“みなと劇場”で幕間芸人をしていた人を探して欲しい」というもの。
さっそくその劇場に取材に向かった香織は、そこでずっと働いている宮部絹代から、安川修平という幕間芸人の存在を聞かされる。
絹代の話に興味をかき立てられた香織は、さらに取材を進めていくのだが…。

四日間の奇蹟

新進ピアニストとして将来を嘱望視されていた如月敬輔は、留学先のオーストリアで強盗事件に巻き込まれた少女をかばい、薬指を失ってしまう。
両親を失った知的障害の少女・楠本千織を引き取った敬輔は、彼女のサヴァン症候群による優れたピアノの才能を見出し、彼女と各地を演奏して廻ることとなる。
そうして招待された療養センターで敬輔たちは、敬輔の高校時代の後輩だった岩村真理子と出会う。
真理子はかつて農家の息子に嫁入りし、子供が出来ないために夫の家族に一方的に離婚を言い出された、という辛い過去の持ち主だった。
真理子と親しくなっていく敬輔・千織だったが、落雷による事故に巻き込まれて真理子は意識不明の重傷を負い、その真理子の心が千織の体に宿る。
真理子に与えられた期間は4日間。最期の時が来るまで、真理子は敬輔と共に自分の人生を見つめ直していくこととなる。

ほたるの里

小学校時代の恩師にあこがれて教員を志した三輪元は、何度も教員採用試験を受けては落ち、ようやく念願だった教員に採用され山口県の小学校に赴任する。

そこでは複雑な家庭環境で心を閉ざした少女、星比加里と出会い、ふとしたことでクラスでホタルを飼育することになる。

ホタルを飼育することによって比加里も心を開いていくようになるが、ホタルを放流する川で護岸工事が行われることとなり、危うくなる。

チルソクの夏

1977年夏。姉妹都市である下関と韓国・釜山は親善事業として関釜陸上競技大会を毎年交互に開催していた。
長府高校の陸上部員・郁子は、この年、下関側選手の一人として釜山での大会に出場する。そこで、同じ高跳び競技に出ていた釜山の高校生・安大豪と出会う。
帰国前夜、安は戒厳令中にもかかわらず、郁子の宿舎まで会いに来てくれた。
郁子はそんな安に淡い恋心を抱き、“来年のチルソク(七夕)に再会しよう”と約束を交わす。
携帯もメールもない時代、日韓にまたがる恋は前途多難。
それでも郁子の初恋をなんとか実らせようと親友たちも懸命に後押しするのだった…。

ロボコン

高専に通う里美は何事にもやる気ゼロの落ちこぼれ生徒。
授業の課題だったロボット製作も手を抜いたばっかりに1ヵ月の居残り授業が確実に。

それを免れる条件として担任の図師は“ロボット部に入って、ロボコンに出場する”という妥協案を出してきた。
実は、わずか3人のロボット部は1人がほとんどユウレイ部員と化していたせいで、大会出場規定の3人を満たせずピンチに陥っていたのだった。

他の2人もどうしようもない変わり者だったが、居残り授業よりはマシと、渋々仮入部する里美。
そして、とりあえず地方大会へと出場するのだったが…。